建設業を経営されているI社長より、事業承継についてのご相談がありました。
I社長は40代と若く、一般的には事業承継を考える年齢ではありません。30代で会社を立ち上げ約10年、お休みもあまり取らず我武者羅に働いて来られ、二人のご息女が大学生になった今、「この会社を誰に継いで行けば良いのか」と思い始めたそうです。
事業承継の選択肢を考えるにあたり、I社長の起業からの想いをお聞きしました。
起業する前は一社員として同業種でお仕事をされていましたが、報酬面で約束が守られず、起業した時には自分が社員として働きたいと思う会社を作ろうと考え、今までやってきたそうです。その甲斐あって、社員さんで辞めていく方は少なく、報酬面も同県同業種では高い位置にあるそうです。
この事業を誰かに引き継いだ場合、新たな経営者には社員さんのことをしっかりと考えて経営をしていって欲しいとの強い希望がありました。

一般的に事業承継の選択肢としては
A: 親族内承継、B: 社員さんなど親族外承継、C: M&Aがあります。また、自社株と事業を分離して考えることも可能です。
今回Aの親族内承継の可能性は無いとのことでしたので、それ以外で3つの選択肢とそのメリットデメリットを簡単にまとめました。

①M&A
メリット
・会社の持っている資産価値以上の金額で売れる可能性が高い。
・株式の譲渡益になるので、税率は20%程度
・売却後は経営に関わらなくても良く、責任もない。
・自社株評価が高いことのデメリットは無い。
デメリット
・社員のことを考えてくれるかどうかわからない。

②現在の社員の誰かに自社株を売却する
メリット
・経営方針を伝え、売却後も社員のことを考える経営を続けてもらえる可能性が高い
・退職金を受け取ることで、退職所得となり税的なメリットがある。
・退職金の支払いにより自社株評価を下げられ、社員が買い取る金額を下げられる。
デメリット
・社員を経営者として育てる必要がある。
・自社株の買い取り資金を社員が用意する必要がある。
・自社株の評価と退職金の金額のバランスが取れないと、社員の買い取り資金が高額になってしまう。
・社員が社長になる際、銀行から連帯保証を求められる可能性が高く、家族の理解が必要。

③現在の社員もしくは別の人へ事業売却。自社株はそのまま保有。
メリット
・経営方針を伝え、売却後も社員のことを考える経営を続けてもらえる可能性が高い
・自社株の評価を高くしても良い。事業売却後に資産を取り崩し個人の所得にする。
・事業売却の金額は自社株評価に左右されないので、自由に設定可能。
・M&Aに切り替えることも可能。
デメリット
・社員を経営者として育てる必要がある。
退職金として一度に大きなお金を受け取れず、所得税、住民税を払いながら役員報酬として受け取るので、税的メリットは少ない。

差し当たり、現在の自社株の概算評価を行いました。また、M&Aを選んだ場合に備えて、複数のM&A仲介会社の話を聞いていくことになりました。
事業承継のご相談から始まりましたが、その他にも様々なおなやみをお持ちで、色々とご相談を頂きました。
I社長からは「今まで、こういった相談を誰にして良いか解らず、一人で悩んでいた。考え方が整理でき、一歩ずつ進んでいる実感がある」と高評価を頂きました。
今後も定期的にお会いし、その時々のおなやみをご相談頂くこととなりました。