建設業を営むB社長より、「お金が残らない」とのご相談を頂きました。詳しくお話をお聞きするため、決算資料3期分をお預かりし、3期比較表を作成しました。3期比較表を分析すると、売上高に対し売掛金の割合が大きいことが解りました。建築業では支払いサイトが長いものも結構あり、売上は立つけれど現金になるまで時間が掛かることが良くあります。また、材料や外注などの支払いは先に発生するため、「勘定合って銭足らず」となってしまいがちです。

対策としては売掛金の早期現金化と材料、外注費の支払いを遅くするのですが、お取引先との交渉、しかも売掛金はお仕事を頂いている会社への交渉となるので、かなり難しい状況です。中長期的には、新規のお取引先の開拓で最初から支払いサイトの交渉をしていくことになりました。

また、3期の中で赤字の期もありました。赤字が全て悪い訳ではありませんが、赤字が続くとその先にはもちろん倒産となるので、その理由が問題です。

赤字の主な理由は役員報酬の増額でした。前期利益が出た為、次の期では税理士の勧めで役員報酬を増額したところ、前期ほど利益が出ずに赤字になってしまった様です。

役員報酬を損金(経費)にするには基本的に定期同額という条件が必要で、今年は利益が出そうだからと期末に役員にボーナスを出すと、税務上は経費としては見てくれません。「従業員への期末ボーナスは経費になるのに・・・」と嘆く社長さんは多いと思います。

しかし、大きなお取引先が倒産してしまった、新型コロナウィルスの影響で売り上げが大きく減ったなどの理由で役員報酬を引き下げた場合は、定期同額を条件としている損金算入も幅を持った対応が可能です。
また、社長へのボーナスを経費にするには事前確定届出給与の提出が必要になります。事前に決めた額を決めた時期に支払った場合のみ経費として認めてくれます。金額が違ったり、時期が違うと経費にはなりません。

基本的には赤字になっても支払わなければならないのですが、支払わず黒字であれば法人税の納税をするので、税務署としては嬉しい方向です。

B社長はこの事前確定届出給与の存在をまだ知らなかったとのことでした。今後どの様に活用出来るかを検討していくことになりました。

このご相談の中で新たなお悩みが出てきました。創業社長であるB社長は会社の株を100%ご自身が保有し、取締役も自分だけでした。世の中にそういった会社も多いのですが、そのリスクについて理解している方は少ない様です。

仮にB社長が急にお亡くなりになってしまった場合、取締役が誰もいなくなってしまうのです。取締役の選出は株主総会の決議事項ですが、100%株主であるB社長本人が亡くなっているので、株主総会が直ぐには開けません。

ご家族の遺産分割協議が済み、次の株主が確定するまで、株は法定相続人の共有財産となり、株主総会は開けません。早急に遺産分割協議を行えれば良いのですが、B社長のお子様の中に未成年の子もいらっしゃいました。

この場合、未成年の子の権利が不当に侵されない様にと、家庭裁判所に特別代理人の選定を申し立てなければなりません。家庭裁判所に選定された特別代理人と奥様や成人しているお子様たちが遺産分割協議を行うことになります。

特別代理人の申し立て時に祖父母や叔父叔母などの候補者を上げることも出来ますが、弁護士や司法書士が選定されることもあります。要は時間が掛かるということです。

特別代理人の選定、遺産分割協議、株主総会の開催、取締役会の開催、法務局への届け出を経てようやく次の代表取締役が決定します。

B社長は会社で生命保険にもご加入でしたが、保険金の請求は次の代表取締役がしなければならないため、こちらもかなり時間が掛かります。借入金の返済、従業員への給与、役員死亡退職金の原資など生命保険の目的は様々ですが、どれも時間的な猶予は長くありません。ちなみに、定款に記載されていない限り役員死亡退職金の支給は株主総会の決議事項の為、手元にお金が有っても死亡退職金の支給は遺産分割協議後になります。
この件もB社長は「はじめて聞いた」とのことでした。

対策として、現在経理を担当されている奥様を取締役にして、B社長が亡くなってしまった場合、一人で取締役会議を開き、自分を代表者にし、法務局に届けるだけで保険金の請求や会社としての契約行為、決済が可能になります。もちろん取締役になることで、経営責任は発生しますので、奥様にご説明は必要です。