土木業を営むD社長から「決算書が良く解らない」とのご相談を頂きました。D社長は2代目で若くして社長を継いだので、経理関係はお母様に任せており、決算書の見方が良く解らないとのことでした。
数字ばかり並んでいる決算書は苦手という社長は多くいらっしゃいますが、D社長は「自分で理解しなければ」と頑張って学ぼうとされていました。

3期分の決算書類をお預かりし、3期比較表を作成し分析することになりました。分析の結果役員借入金が多いことが解りました。D社長からの借り入れと、お母様からの借り入れがあり、長年返済はされていない状況でした。

先代のお父様の時代、資金繰りの為に役員報酬が未払いとなり、積もり積もってお母様からの借入金額は数千万円に上っていました。お母様はまだお元気ですが、お歳が70代ということもあり、そろそろ考えなければという状況です。

仮にお母様がお亡くなりになった際には、会社に貸し付けたお金は相続財産の一部となり、相続税の課税対象になります。すぐに現金にならない貸付金でも相続税の対象になってしまうので、納税資金対策も必要になります。

もし、お母様が会社に貸し付けたお金は返さなくて良いとした場合、会社は特別利益として益金計上しなくてはならないため、法人税の納税が発生します。借入金の返済は税金を払った後のお金からしなければならないので、数千万円の借り入れを返済するにはその1.5倍くらいの税引前利益が必要になります。計画的に時間をかけて返済をしていかないと、本業での設備投資、人材投資に影響してしまいます。

差し当たり、相続財産を減らすためにお母様からD社長へ贈与をし、贈与で頂いたお金を会社に貸し付け、会社はお母様に返済をするというスキームをご提案しました。

会社から見れば借入先がお母様からD社長に変わっただけで、キャッシュフローは悪化しません。しかし、贈与税の非課税枠の年間110万円だけでは数千万円の貸付金をゼロにするには時間が掛かりすぎる為、更なる対策が必要です。

幸いにも本業は好調で利益も出ていましたので、お金が出て行かない損金の作り方について検討しました。

会社の保有資産の中にはバブル期に買った土地があり、現在の時価に比べるとはるかに高い金額が簿価として決算書に記載されていました。この土地を売却した場合、大きな売却損が出ることが予想できます。

ただし、その土地は事業で使っている土地なので他人に売ることは出来ません。そこで、D社長が銀行から個人でお金を借り、土地を会社から購入する方法をご提案しました。土地を購入した後は、会社から土地の賃貸料をもらい、銀行返済に充てていきます。会社は簿価と売却価格の差額の損金が発生し、売却により現金が手に入ります。その現金をお母様への返済原資とすることも可能です。

注意点としては、会社と代表者との取引となるため、売買価格は不動産鑑定士を入れ、公正な価格を算出する必要があります。また、土地の賃貸料はD社長個人の不動産所得となり、納税も必要となるので、賃貸料が全て銀行返済に使えるわけではありません。賃貸料は周辺の賃貸相場から妥当な金額にする必要があります。

また、法人としては大きな赤字を作るため、公共事業などを請け負っている会社では赤字決算を組むことが難しい場合もあります。

最終的には銀行がお金を貸してくれるかどうかがポイントになりますが、本業が好調なため、銀行も首を縦に振ってくれそうです。
決算書の見方のご相談でしたが、結果的には相続対策に近い内容となりました。